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文字を読む術

大きな声で朗読したり、黙読したり、言葉を記憶したり

いわば頭の中に蔵書を作ってこれを持ち運ぶというのは、ほんとうに驚くべき能力です。

 

しかし、こうした能力を獲得する前に、

そもそも「文字を読む術」を修得しなければなりません。

 

ある時、クロード・レヴィ=ストロースは、ブラジルのナンビクワーラ・インディアンの社会を旅していました。

レヴィ=ストロースが文字を書く様子を見ていた滞在先の主人が、

ついに鉛筆と紙を持ち出し、彼が書いた文字を真似て

くねくねと線を引いたかと思うと、彼にこれを「読む」よう求めました。

ナンビクワーラ・インディアンたちは、自分たちが真似て書いたこの「くねくね」が、

レヴィ=ストロースにとっても「直接的に」理解されると思ったのです。

 ◀C. レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』

 

文字を読むために私たちが修得した方法は、

読み書きの能力(=情報を伝え、同時に知識や能力の序列化を促す能力)に関する社会が定めたルールを示すだけではありません。

方法いかんで、この能力を実際にどこまで駆使できるか、そのモードが定まり、リミットも定まるのです。

 

(A. マングェル『読書の歴史 あるいは読者の歴史』より)